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ある患者さんとの関わり。

今日、私が勤める病院に、長く通ってくださっている患者さんが、定期受診で来院されました。
ご高齢ですが、ご自身で歩いて受診できる方です。ただ、以前からの認知症が進行している様子が伺えます。
以前よりも乏しくなった表情。院内をどこに移動すればいいか、自分では判断できない様子です。
付き添いの方に腕を引っ張ってもらい、行先を誘導されています。
でも、会話はでき、その場のやり取りはちゃんと成り立ちます。
お名前を聞けば、ゆっくりと大きな声で生年月日と共に答えてくださいます。
いくつか会話をした後、「どこか、しんどいところはありますか?」と私からの問いに、
「頭が駄目なんです。ぼおっとしてしまって。」「もう死んでしまわないといけません。」
フフ、と軽く笑いながら、おっしゃいました。
この言葉を聞いて、胸が ぎゅっ となりました。
認知症患者さんの気持ち。
認知症の方は、「何もわからなくなってしまった人」と思われがちです。
でも、そうではありません。
この患者さんも、自分の具合が良くない事を感じています。
うまくまわらない思考、モヤがかかったような頭の中、思うようにならない日常。
それらへの戸惑いと混乱が、「頭が駄目なんです」という言葉ににじみ出ているのだと思いました。
認知症が進行しても、その人の感情は残ります。言葉にならなくても、一人の人間として、ちゃんとそこに心があります。

だからこそ、私たち専門職は「伝わらないだろう」と決めつけず、その人の言葉に耳を傾け気持ちに寄り添うことが大切なのだと、改めて考えさせられた瞬間でした。
現状での関わりの限界
私が勤務する病院は、積極的に地域に出て、介護を要する患者さんと連携をしているわけではありません。
認知症の患者さんや介護が必要な患者さんがおられれば、介護保険サービスにつなぐまでという
対応となります。
患者さんの具合が悪くなられれば、病院として治療対応は行いますが、ケアマネジャーのように、本人に生活全体に寄り添い、長期にわたって本人・家族と並走していくことはできません。
外来での関わりは、どうしてもその場限りになってしまいます。
「この先、この患者さんはどうなっていくんだろう」と思っても、次の受診まで私たちにできることは限られています。
今日も、その限界を改めて感じました。
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その場限りだからこそ、できることもあるのでは
でも、その場限りだからこそ、できることもあるのではないかと思いました。
もちろん、毎日本人と向き合い続ける介護職の方々やご家族の深い関わりには、到底かなうものではありません。
それでも、外来という立場だからこそできることが、少しはあるのかもと。
継続的に関わるケアマネジャーや介護職の方々は、毎日向き合えば向き合うほど、感情のコントロールを要する場面は増えると思われます。本人との関係が深い分、自然な事です。
外来という立場は、深く関わることができない。その代わり、毎回フラットな目で患者さんを見ることができます。そして、その視点のまま、ただその場で寄り添うという対応になる。
「死んでしまわないといけない」とおっしゃった患者さん。
私はその時、一瞬返答に躊躇しました。でも、気持ちのまま、
「死んでしまわないとなんて言わないで。寂しくなるよ」と伝えました。
本当に悲しく感じたから、その気持ちを伝えたのです。
その患者さんは、「フフ」と軽く笑うだけでしたが、優しい顔をされていました。
私の返答が専門職として正しいものだったかは、わかりません。ただ、患者さんに私の気持ちは伝わったのはわかりました。
人として正直な思いを伝えた事は、外来という距離感だったからこそ、できたのではないかと思いました。
医療職として、患者さんに何が出来るのか
医療や介護の現場で働いていると、「もっとできることがあったのではないか」と感じる瞬間が、きっと誰にでもあると思います。
外来だから、病棟だから、介護施設だから。
立場が違えば、できることも、できないことも変わってきます。
完璧に寄り添えなくても、その場でできる精いっぱいの関わりが、その人の心に少しでも届けば、
それで十分なのかもしれません。
今日の患者さんの「頭が駄目なんです」という言葉や、その後のやり取り、しばらく私の胸に残り続けると思います。
ただ自分の思いを伝えるしか出来なかった自分。専門職として力不足は感じました。
でもこんな日があるからこそ、患者さんの為に次に何が出来るのか、進み、考えていけるのだと思いました。



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